2006-11-04

霊性と聖性 スピリチュアルとはなにか

昨日、高野山大学から最新の密教学会報が送られてきました

僕は、いちおう大学卒業してからずっと密教学会の会員なのですけど、その巻頭言を世話になった先輩が書いてるじゃありませんか
今はもう教授ですけど、さぼってたサンスクリット語の授業のノートを貸してもらったり、下宿で夜明けまで議論したり、思い出せばきりがない

大学の密教学会の代表に就任されたようです
知らんかった(汗)

実は去年、高野山大学は、国文科とか英文科とか社会福祉学科とかいろいろ学部があったのを整理して、密教学科とスピリチュアルケア学科の二つだけに整理統合してしまったのです
その統合後初の学会報ということで、記念すべきものです

特集を「密教とこころのケア」ということで、なかなか力作の論文が集まったようです
このブログをお読み頂いている方には興味ある論題かと思います

スピリチュアルケアというのはもともと、国連のWHOで、「肉体と心の健康」だけが健康の範囲だったのを改革して、「健康とは、肉体と心とスピリチュアルがダイナミック(力動的)な状態をさす」と定義しようとしたのがお話の始まりです
今のところ議長預かりで決議までにはいたっていません

スピリチュアルとはなにか、というところが全世界的な合意に至っていないのが理由です

実はこの「スピリチュアルな健康」を言い出したのはイスラム諸国です
僕もよく知らないけど、医療行為や病気の治癒に、アッラーの思し召し、あるいは、アッラーの意志の反映を認めているんでしょうねぇ
それで、イスラム諸国においては、おそらく、スピリチュアルという言葉にかなり宗教的な意味があらかじめ設定されているだろうことは考えられます

ですけど、これが、我が日本国では、スピリチュアルといえば江原さんを連想する方が多いんじゃないでしょうか
シルバーバーチとかが元ネタということになれば、スピリチュアル、イコール、心霊ですね
霊性でもいいけど

で、いろいろ論文をご紹介したいんですけど、特にですね
長谷川淑崇さんの「現代スピリチュアリティ思想の位相」から引用させてもらいます(密教学会報第44号p.52)

十九世紀、まったく相手にされなかったスピリチュアリティ思想が現代社会に要請される理由として、成長信仰を持つ合理社会が死の意味づけを人々に与えて、その虚無を覆い、さらにシステムを持続させる目的に、現代スピリチュアリティ思想が合致したことを前半部分でみました。
死後も続いてゆくたましいの物語世界を与えることが、現在のむなしさや苦痛を意味づけ、癒すからです。
しかし、ターミナルの現場においてのそれは、少し違ったものでした。
怒り狂っていた人でも、亡くなられる前には落ち着いて、リラックスした気分になる。それほ、言葉集めで意味づけしたり、新しい拠りどころ探しをするのとは、やはり違った何かがある。私は、それが"聖性"なのではないか、と考えました。聖なる価値とされてきたものが、本人の中に芽生えること、それが、スピリチュアリティなのではないか。キりスト教でいえば博愛、仏教でいえば慈悲が相当します。
今、私たちの社会は、これらが個人の中に発現され難くなっています。
合理的社会も悪ばかりではなく、肉体的な「貧・病・争」を減少させる有用な価値です。しかし今、心の「貧・病・争」が広がりつつあります。
それは、聖なる価値が見失われているためかもしれません。それをターミナルの患者たちが気づかせてくれているように感じます。


この人は上田さんの論文も引用してます

現代社会は、「明日は今よりもより善くなる」という成長信仰と、目に見え手で触れるものだけ信じる合理性とでささえられていますが、そうすると、「死」は「絶対的な虚無」としてどうしようもなく価値が見いだせなくなります

死後にもたましいが存在する、かたちを変えて生き続ける、そういった物語世界が癒しであり苦痛の軽減になる・・・・・かというと、実際はそうじゃない

「言葉集め」や「拠りどころ探し」とは違う

死に臨んだ人の中に聖なる価値が、芽生える

それこそがスピリチュアリティだと


これは、「聖」とはなにか、とか言い出すと、また議論があっちいっちゃいますが
スピリチュアルは心霊じゃないよ、ってあたりが慧眼です

「あの世があって、いろいろ面白いぞ」なんてお話じゃ、ほんとに死んでいく人は納得しないのよ

「聖なる価値が芽生える」とまあ、どう表現しますかね
僕は「次元の違う感触が来る」と言ってるんだけど
まあ、とにかく、言葉じゃないのですよ




マスコミさんも、この程度のお話についてこれるようになって欲しいですね


ちなみに、引用した文章は新しく買ったプリンターからOCRで作成しました
便利だね

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