観ること自在なる菩薩(2)


般若心経で言うところの「顛倒夢想」は、進化の過程で出来上がった脳の仕組みに由来します
脳幹は生存にとって重要な情報だけに反応するようにできています
脳幹のフィルターを通過して形成された脳内イメージが、生に執着しエゴイズムに満ちたものになるのは、まあ、自然の摂理でもあるのです
で、その脳内イメージだけでは人間が幸せになれないのは、脳幹によってフィルターにかけられた、「顛倒夢想」だからです

般若心経(隅寺心経) 天平時代 冒頭部分

般若心経には「観ること自在なる菩薩」は一切の苦厄から救われると書かれています

「観自在菩薩」は、よく誤解されていますが、観自在菩薩という人格を持った存在ではありません  とらわれなく物事を考察する人は、といった意味になります

なんの固定観念にも縛られず、一切の先入観もなしに、物事をとらえることのできる人は、実は限られています
「観ること自在」というのが、なかなか難しいのです

そもそも人間は脳の仕組みによって自己保存に役立つ情報に関心を持つようにできているので、生死、損得、勝ち負け、上下関係などに縛られずに物事を考えるのが難しいのです
「自在」とは、勝手気ままということではなく、生死、損得、勝ち負け、上下関係など一切の先入観を離れることなのです


我々の脳内世界は、いわば「ありのままの世界」から、その一部を切り取っているのです

意見の食い違いや、衝突、孤独など、あってあたりまえです

では、「ありのままの世界」とはどんな世界なのかといえば、仏教は、「空(くう)」つまり曼荼羅だと言っているのです

手っ取り早く「空」を体験したい方は、パッと目をつぶってみてください
その時、目の前の画面は「空」になっています

そこにあるけれど、どうなっているか見ていないのだからわからない
わからないけれど、ある

般若心経には不生不滅不垢不浄不増不減と書かれています