鐘の声

長保寺 梵鐘

さて、そろそろ除夜の鐘ですね

長保寺でも、12月31日の午後11時45分から、除夜の鐘を撞き始めます
どなたでも、おいでいただいたら、撞いていただけます
年をまたいで108回撞きたいところですが、どんどん続いて撞いていただいて、12時までに終わることもあります

この鐘の「ゴーン」という音ですけど

このような、複雑な波長が混じっている音に風情を感じるのは、どうやら日本人だけのようです

「いろいろな音で、左脳と右脳の違いを調べると、音楽、機械音、雑音は右脳、言語音は左脳というのは、日本人も西洋人も共通であるが、違いが出るのは、母音、泣き・笑い・嘆き、虫や動物の鳴き声、波、風、雨の音、小川のせせらぎ、邦楽器音などは、日本人は言語と同様の左脳で聴き、西洋人は楽器や雑音と同じく右脳で聴いていることが分かった。」

「自然音を言語脳で受けとめるという日本人の生理的特徴と、擬声語・擬音語が高度に発達したという日本語の言語学的特徴と、さらに自然物にはすべて神が宿っているという日本的自然観との3点セットが、見事に我々の中に揃っているのである。」

「自然音を言語脳で受けめるという日本型の特徴が、日本人や日系人という「血筋」の問題ではなく、日本語を母語として最初に覚えたかどうか、という点で決まるということである。」

 http://www2s.biglobe.ne.jp/%257Enippon/jogbd_h14/jog240.html

 
日本人の脳―脳の働きと東西の文化
角田 忠信
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実は、仏教には単純な音階だけ取り出して鳴らす道具もあります

長保寺内仏堂 磬(けい) 江戸時代
導師の右横に置いて、法要の要所で鳴らします
天台、真言で使います
この音が、天台宗では正式には雅楽の音階の宮(D レ)の音になっています

正式というのは、現在では、ただ音が鳴るだけで音階が無視されている磬が多いのです

しかし、宮の音階で磬を始めに鳴らすと、その後に続く声明の音階がそろうように法要がつくられています
ちなみに、天台では導師のことを調声ともいいますが、このような呼び方をするのは天台だけです
導師は釈尊で、調声は宮の音を唄士に出す、というのが本来の法要です
磬の字に石が使われているのは、古代中国で石をひもでつるして打ち鳴らしていたからです

石制乐器磬的历史(图)

音を、音階によって分解するのは、つまり、右脳で音を聞いているから、音を序列化して道具のように扱うことが自然にできたということでしょうか
日本で磬の音階が無視されるようになったのは、日本人が音を、そもそも左脳で言葉の如くに聞いているから、ということになります
おそらくは、キリスト教音楽が隆盛を極めた反面、仏教音楽が普及しないのは、このあたりに理由があるのだろうと思います
西洋の、カリヨンやハンドベルのように鐘の音を音階で分類するのは、仏教にはありません
「ゴーン」という梵鐘の音は、楽譜には書けませんから、楽器として使いにくいということはあります
仏教と音楽は歴史的には密接な関係があるわけですが、実際はこれからの未開拓な分野と言ってもいいでしょう
日本人が、右脳で音を聞いていたら、キリスト教音楽のように、もっと宗教と不可分の分野として発展したのかもしれませんね
紀伊徳川藩主霊前仏間人天蓋彫金 鳳笙を奏でる天女
天華を散らす天女
竜笛を奏でる天女
鞨鼓を打つ天女
同じ意匠の天蓋が長保寺本堂にもあります
仏教に音楽がもっと取り入れられてもいいです
それには、音階を明瞭にして、扱いやすくすることが必要になりますね