日本仏教の特色は「妻帯」

僕が今まで実際に足を運んだ仏教国は

インド 仏跡巡拝を7回しました 現在は人口の1%が仏教徒
ネパール 今年4月の大地震で多くの仏塔が破壊されてしまいました
中国 五台山や西安など5回行きました 寺院の中では宗教活動ができることになっています 意外に思われるかもしれませんが、熱心な信者が多数います
タイ 仏教が国教になっています
スリランカ 最初期の仏教に一番近い形と考えられています
インドネシア ボルブドゥールの仏跡に行きましたが、ここはただの遺跡ですね
台湾、韓国、ミャンマー、ブータンは行ったことないです
カルムイク共和国(旧ソ連)も仏教国ですが、行ったことないです

こうしてみると、仏教は世界宗教であることがわかります
国や地域によって、それぞれ独自の発展をしています

上座仏教系が、スリランカ、ミャンマー、タイ
チベット仏教系が、ネパール、ブータン、カルムイク共和国
インドは、13世紀頃、一度完全に仏教がイスラムによって破壊され、最近、各宗派が寺院を建設しています
中国は、チベット自治区がチベット仏教ですが、その他の地域では、念仏と禅を合わせたような独特の仏教です
台湾、韓国は禅系

日本の場合は、インド周辺国のように、仏教の発展とともに順次伝播するということが無くて、仏教発展の最終形態の密教が最初期に伝えられました
おおよそ二系統あって、比叡山系と高野山系です

大まかに言って、比叡山系は天台宗を始めとして、浄土系、浄土真宗系、臨済系、曹洞系、日蓮系です

一口に「比叡山は日本仏教の母山」と言いますが、主な宗派の開祖は皆、一度は比叡山で学んでいます

法然
(1133-1212)
浄土宗
15才の時、比叡山で得度

親鸞
(1173-1262)
浄土真宗
始め比叡山に学び、後に法然の弟子となる

栄西
(1141-1215)
臨済宗
比叡山に学び、密教の一派、葉上流を興す
二度入宋し天台山にて禅を学ぶ

道元
(1200-1253)
曹洞宗
始め比叡山に学び、栄西の弟子となる
栄西没後入宋し曹洞禅を学ぶ

日蓮
(1222-1282)
日蓮宗
比叡山にて法華経を学ぶ

日本仏教の特色ということで、細かく見ていけば、きりがないわけですが

日本仏教と世界各地の仏教を比較して、最大の違いは
日本の僧侶は妻帯している、ということです

世界標準で言えば、僧侶は独身で妻帯しません
妻帯した僧侶が当たり前にいるのは、日本だけです

これは、明治維新で出された布告が始まりです

独身は、西洋文明から見たら野蛮だ、といった考え方だそうです

布告が出たので、これ幸いに妻帯するようになった、ということではありません
根本は、伝教大師の一向大乗戒です
世界標準の戒律は、正式の坊さんになるのに約250の戒律を守ることを誓わなければなりません
250の戒律を単純に言えば、世俗的生活を一切やめる、ということです
伝教大師は、それを捨て去り、大乗仏教だけの戒律を始めたのです

一心三観が、思想的な根拠になると思います

出家–>真実の生活(精進料理、妻帯せず) 

在家–>仮の生活(肉食妻帯) 

とします

で 

出家–>真実の生活–>空 

在家–>仮の生活–>仮 

形に捉われない生活–>現在の日本仏教–>中 

ということになるのです

一心三観 http://www.chohoji.or.jp/houwa/issinsankan.htm

円頓戒本尊像  一幅
長保寺蔵  

絹本著色 縦122.9 横59.1
明治21(1888)年

円頓戒は古くは円戒と称し、天台宗(円宗)の僧としての身分と自覚を得るための戒である。この画像は中央に金色の釈迦如来像とその左右前方に比丘形の文殊・弥勒菩薩、更に背景上部には、天台大師・伝教大師・智証大師・慈覚大師を象徴的にあらわす図柄がある。

箱の裏書によると、この画像は長保寺第16世堯海が、明治21年(1888)に京都の仏画師岩城綜匡に描かせたものである。 


現行の天台宗の戒律をご紹介します
下記のようなことを、比叡山の戒壇院(国宝)で授かります 

天台宗の戒律 

正授戒 

攝律儀戒を守り  道心ある人となります
攝善法戒を守り  能く行い能く言う人となります
攝衆生戒を守り  一隅を照らす人となります
 
戒 

不殺生戒  あらゆるものの命を大切にいたします
不偸盗戒  いかなるものでも無断で自分のものといたしません
不邪淫戒  人の道にはずれた行いはいたしません
不妄語戒  うそ いつわりは申しません
不邪見戒  自分勝手な考えを慎み 正しい分別に従うようにいたします
  
正道(聖い法の道) 

第一  正見   正しい見解をもつこと
第二  正思惟  正しい意志をもつこと
第三  正語   正しい言葉で真実を語ること
第四  正業   正しい行為をすること
第五  正命   正しい生活を充実すること
第六  正精進  正しい努力をすること
第七  正念   正しい動かざる心をもつこと
第八  正定   正しい精神を確立させること

これが、比叡山で行われてる円頓戒です
戒律としては極めて単純なものです 

最澄の大乗戒壇設立について 大野達之助
http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/20392/KJ00005098015.pdf

この一向大乗戒があったから、比叡山系の各宗派の祖師方が独立していくことができたのです

世界標準の250の戒律には、独身でなければならないことが定められていますが、比叡山系の戒律には、初めからそれはありません
制度としての独身を受け入れていたのが、明治の太政官布告でどちらでもよくなった、というだけのことです
比叡山系の宗派の僧侶が妻帯するのは、戒律上も、なんら問題がありません

日本仏教の特色を決定づけたのは、伝教大師の一向大乗戒ということになります

これがですね、高野山系は、弘法大師が「顕密二戒を固く守れ」と定めていて、世界標準に準拠しています
250の戒律プラス、密教の三摩耶戒なのです・・・・・

癒される瞑想

    

Copyright(c) since 1996 CHOHOJI
このホームページの内容を許可なく転載することを禁じます
著作権についてはこちら
出版、パンフレットなど、印刷物等にご利用の場合は長保寺の許可が必要です